車のカリキュラム第3講 メーカーの地図・日本編
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車のカリキュラム / 第1部 地図編

第3講 メーカーの地図・日本編

8つの会社は、もともと何屋さんだったのか

「どこのメーカーがいいですか」。車の相談で、いちばん多い質問です。 でも、この質問には正解がありません。会社に優劣があるのではなく、得意分野がちがうだけだからです。 そして、その得意分野は偶然決まったものではありません。その会社が、もともと何を作っていたかで決まっています。 この講は、8社を1枚の地図にして見渡す回です。

01「どこのメーカーがいいか」の前に

最初に、少し意地悪なことを言います。メーカーから選び始めると、たいてい失敗します。

順番が逆だからです。何に使うかが決まれば、必要な大きさが決まる。大きさが決まれば、候補は数車種に絞られる。 その数車種を比べた結果として、たまたまどこかのメーカーの車が残る・・・これが正しい順番です。 メーカーは、選ぶ理由ではなく、選んだ結果としてついてくるもの。ここを最初に置いておいてください。

ではなぜメーカーを知る必要があるのか。理由は3つあります。

3つ目は後半でくわしく話します。ここだけでも、この講を読む価値があると思ってください。

02出自の地図・・・もともと何屋さんだったか

日本の自動車メーカーは、最初から自動車の会社だったところのほうが少数派です。 出発点を知ると、いまの車の性格がそのまま説明できてしまいます。

出発点会社いまに残っているもの
織機(布を織る機械)トヨタ/スズキものづくりの効率と、むだのない作り。安く確実に量産する力
オートバイ・発動機ホンダ/スズキ回して楽しいエンジン。小さな空間を広く使う設計
航空機スバル/三菱安定して真っすぐ走ること、丈夫さ、四輪駆動へのこだわり
造船・重工業三菱頑丈な作りと、悪路をいく四駆の系譜
コルクの加工マツダ他社と同じことをしない気質。ロータリーエンジンへの挑戦
発動機の製造ダイハツ小さなエンジンを突き詰める力。いまの軽自動車
自動車の専業として日産戦前からの技術の蓄積。新しい動力を先に出す姿勢

ここがおもしろいところ

スバルの車が高速道路で疲れにくいと言われるのは、もとが飛行機の会社だからです。 真っすぐ安定して進むことを何より優先する設計思想が、いまも残っている。 車の性格は、80年前の出発点とつながっています。カタログの数字より、こちらのほうが記憶に残るはずです。

038社を一言でいうと

ここが今日の本体です。各社を一言でつかんでください。くわしい歴史・車種の系譜・評判は、各社のページに分けてあります。 気になった会社だけ、あとから深く読めばいいです。

1937 / 織機

トヨタ

豊田自動織機の自動車部から独立
外さない優等生
得意
ハイブリッド。全方位(HV・PHEV・EV・FCVを並行)
向く人
初めての1台。長く乗りたい。止まると困る使い方
ひとこと
壊れにくく、直せる店が多く、手放すとき値が付く。この3つの同時成立が強み
→ トヨタの詳細ページ
1948 / オートバイ

ホンダ

本田技研工業。二輪から四輪へ
技術で驚かせたい会社
得意
よく回るエンジン。室内を広く使う設計。軽自動車(N-BOXなど)
向く人
実用と走りの両方が欲しい。軽で広さを最優先したい
ひとこと
いまも二輪で世界最大級。四輪の"作りたいものを作る"気質はそこから来ています
→ ホンダの詳細ページ
1933 / 自動車専業

日産

ダットサンの流れをくむ老舗
新しい動力を、先に出す
得意
電気自動車(2010年のリーフは量産EVの先駆け)。e-POWER
向く人
静かな走りが好き。電動車を試したい
ひとこと
経営の混乱と立て直しを何度も経験しています。技術の評価と経営の評価は分けて見てください
→ 日産の詳細ページ
1920 / コルク加工

マツダ

東洋コルク工業→三輪トラック→乗用車
少数派でも、自分の道をいく
得意
ロータリーエンジン。ディーゼル。走りの気持ちよさとデザイン
向く人
運転そのものが好き。高速や長距離が多い
ひとこと
規模は大きくありません。だからこそ他社と同じことをしない選択をしてきた会社です
→ マツダの詳細ページ
1953 / 航空機

スバル

中島飛行機の流れをくむ
安全と、真っすぐ走ることに全振り
得意
水平対向エンジンと四輪駆動の組み合わせ。運転支援(アイサイト)
向く人
雪や山道が多い地域。高速の移動が多い。安全装備を最優先したい
ひとこと
燃費が特別いいわけではありません。そこを承知で選ばれている会社です
→ スバルの詳細ページ
1920 / 織機

スズキ

鈴木式織機→二輪→軽自動車
軽く、安く、むだがない
得意
軽自動車と小型車。車体を軽く作る技術。インド市場で圧倒的
向く人
維持費を抑えたい。街乗りが中心。初めての1台
ひとこと
「小さく作る」を突き詰めた会社。派手さはありませんが、家計にはやさしい
→ スズキの詳細ページ
1907 / 発動機

ダイハツ

発動機製造→軽自動車へ。現在はトヨタの完全子会社
軽自動車の専門店
得意
軽自動車の作り込み。使いやすさの工夫
向く人
軽で日常の足をまかないたい
ひとこと
2023年に認証手続きの不正が公表され、生産が止まりました。会社を見るときは、この出来事も込みで見てください
→ ダイハツの詳細ページ
1917 / 造船・重工業

三菱

三菱造船がA型を製作。三菱自動車工業へ
悪路と、電動四駆
得意
四輪駆動。プラグインハイブリッド(アウトランダーPHEV)
向く人
アウトドア。雪道。災害時に電源としても使いたい
ひとこと
過去にリコール隠しや燃費試験の不正がありました。技術の良さと、その歴史の両方を知ったうえで選ぶ会社です
→ 三菱の詳細ページ

各社の詳細ページは、会社ごとに背景の色を変えてあります。印刷して重ねたとき、どの会社の資料かがひと目で分かるようにするためです。

このほかに、いすゞ・日野・UDトラックスといったトラックやバスの会社があります。 いまは乗用車を作っていないので、この講では扱いません。ただし中古市場では、これらの会社が作った古い乗用車に出会うことがあります。

📊 図解③ 日本8社の地図(A3横1枚)
出自・得意・性格・向いている人・維持の傾向を横並びに。下段には資本のつながりも載せてあります。印刷して、店に行く前に眺めてください。

04会社どうしは、つながっている

8社はそれぞれ独立して戦っている・・・と思われがちですが、実際にはかなり手を組んでいます。 ここを知らないと、後半の話が理解できません。

かたまり顔ぶれ関係
トヨタを中心とした一群 トヨタ/ダイハツ/スバル/マツダ/スズキ ダイハツは完全子会社。スバルには2割ほど出資し、相互に株を持ち合う。マツダ・スズキとも資本提携
日産と三菱 日産/三菱 日産が三菱自動車の筆頭株主。海外メーカーを含む連合の一部でもある
独立系 ホンダ 資本のうえでは独立。特定の分野ごとに他社と手を組む形をとる

要確認出資の比率や提携の枠組みは動きます。買う時点で最新の形を確かめてください。ここでは「おおまかな地図」としてつかんでもらえれば十分です。

05同じ車が、ちがう名前で売られている

ここが、今日いちばん実利のある話です。

自動車業界には、ある会社が作った車を、別の会社が自社の名前を付けて売るという仕組みがあります。 OEM供給(相手先ブランドでの供給)と呼ばれます。エンブレムと車名がちがうだけで、中身はほぼ同じ車です。

たとえば軽自動車では、ダイハツやスズキが作った車が、トヨタや日産や三菱の名前で売られていることがあります。 こういう組み合わせが、あちこちにあるのです。

買う人にとって、何が変わるのか

  • 中古で探すとき、兄弟車のほうが安いことがある。人気ブランドの名前が付いているほうが高くなりやすいからです
  • ほぼ同じ車なのに、値引きの余地や在庫の数がちがうことがある
  • 保証や点検の窓口は、売った会社のほうになります。整備の相談先が変わります

つまり、狙っている車が見つかったら「この車の兄弟はいませんか」と一度調べてみる価値があります。 同じ中身で、数万円から十数万円ちがうことがある。知っているかどうかだけの差です。

どの車とどの車が兄弟なのかは、年式によって入れ替わります。具体的な組み合わせは第10講「中古車の目利き入門」で、調べ方ごと扱います。

06メーカーの評判との付き合い方

各社のページには「ネット・SNSでの評判」という項目を置いています。ただし、読み方に注意が要ります。

不祥事の扱いについて

この講では、各社の不祥事も隠さず書いています。 良いところだけを並べた紹介は、これから何百万円を出す人の役に立たないからです。 ただし、過去に問題があった会社の車がいま危ない、という意味でもありません。 起きたことを知ったうえで、いまの車を自分の目で見る。それが目利きです。

07この地図の使い方

次の講から、この地図を実際に使っていきます。順番はこうです。

第4講メーカーの地図・世界編(外車の魅力と、維持の現実)
第5講車業界の過去と現在(8社が同時に何を経験してきたか)
第7講何に使うか(用途から必要条件を逆算する。街乗りと高速の比率)
第10講中古車の目利き入門(兄弟車の調べ方はここで)
第17講維持費の全体像(各社の傾向が金額になって出てきます)

今日、ひとつだけ

いま家にある車、または身近な人の車が、どこの会社の何という車か調べてみてください。 そして、この講の「出自の地図」でその会社の出発点を見てみる。 毎日見ていた車が、80年前の物語とつながります。そこから車の話は面白くなります。

出典と注記