車のカリキュラム終章 持つ・持たないも、自分で決める
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車のカリキュラム / 終章

持つ・持たないも、自分で決める

車は、手段であって目的ではない

23の講を通して、車の選び方、買い方、持ち方、手放し方を見てきました。 最後に、いちばん根本のところに戻ります。 そもそも、あなたに車は必要でしょうか。 この問いを最後に置いたのには理由があります。ここまで読んだ人だけが、この問いにきちんと答えられるからです。

01なぜ最後に、この問いなのか

最初にこの問いを置くこともできました。でも、それでは意味がなかったのです。

車を持つのにいくらかかるかを知らない人が「持たない」と言っても、それはただの思いつきです。 年間の維持費を9項目で数えられて、車検も保険も消耗品も分かったうえで、 それでも持つと言うのか、持たないと言うのか。そこで初めて、それは選択になります。

知ったうえで選ぶ、ということ

このカリキュラムは、車を買わせるためのものではありませんでした。 自分で決められるようになるためのものでした。 その意味で、この終章は最初の講と同じことを言っています。 形を選ぶとは、何をあきらめるかを選ぶこと。持つか持たないかも、まったく同じ構造です。

02持たない場合の選択肢

手段向いている使い方気をつけること
カーシェア短時間、近距離。買い物や送迎近くにステーションが要る。人気の時間帯は埋まる
レンタカー1日以上、旅行や帰省予約が要る。繁忙期は高くなる
タクシー・
配車サービス
雨の日、荷物が多い日、飲んだあと距離が長いと高い。地方では台数が少ないことも
公共交通通勤通学、都市部の移動本数と終電。地域差が非常に大きい
自転車・
電動アシスト
近距離、買い物、送迎天候と坂。子どもを乗せる場合は安全面の確認を
宅配・
移動サービス
買い物、通院の付き添い地域によって使えるものが変わります

ひとつで代わりになるとは限りません。組み合わせて、車1台ぶんの働きを作るのが現実的です。 平日は自転車と電車、雨の日はタクシー、旅行はレンタカー。この組み合わせで足りる人は、実際にいます。

03損益の分かれ目を計算する

数字にしてみましょう。第17講で出した年間維持費が、そのまま比較の材料になります。

比べ方

  • 持つ場合・・・年間の維持費 + 車両価格の年割(第8講の年間コスト)
  • 持たない場合・・・カーシェアやレンタカーの年間利用料 + タクシー代 + 公共交通の運賃

ここで大事なのは、使う頻度によって答えがはっきり変わるということです。

使う頻度傾向
毎日持つほうが安く、楽なことがほとんどです
週に2〜3回使い方しだい。距離が短ければ持たない選択も現実的
週に1回程度持たないほうが安くなることが多い
月に数回持たないほうが安いことがほとんど
📊 図解㉞ 持つか、持たないか(A3横1枚・書き込み式)
両方の年間費用を書き出して比べる表です。頻度別の目安と、数字に出ない要素の欄も付けました。この1枚が、このカリキュラムの最後の道具になります。

04地域によって、答えは変わる

この話をするときに、絶対に忘れてはいけないことがあります。 「車を持たない」という選択ができるのは、それが可能な地域に住んでいる人だけだということです。

都市部公共交通の少ない地域
車の位置づけあると便利なもの生活の前提
駐車場代高い。年間で数十万円になることも安い、または自宅の敷地内
代わりの手段電車、バス、タクシー、カーシェア限られる。本数も少ない
持たない選択現実的難しいことが多い

第5講で「同じ国の中で、車の意味が二つに分かれてきている」と書きました。ここがその話です。 通院に車が要る、買い物に車が要る、仕事に車が要る。そういう場所では、車は贅沢品ではありません。

だから、この講は「持たないほうがいい」と言いません

持たない選択を勧める記事は世の中にたくさんあります。 でも、それは都市部に住む人の前提で書かれていることが多いのです。 あなたの生活の条件は、あなたにしか分かりません。 だからこのカリキュラムは、答えではなく計算のしかたを渡してきました。

05数字で決まらないもの

最後に、計算では出てこないことを書いておきます。

深夜に家族が熱を出したとき、すぐに病院へ行けること。 行きたい場所に、行きたい時間に行けること。 好きな車に乗っているときの、あの気分。 家族で出かけた日の、車の中の会話。

これらは家計簿に載りません。でも、確かに価値です。 第11講で、輸入車を選ぶ人の話をしたときと同じことを言います。 数えたうえで、それでも欲しいなら、それは正しい買い物です。

逆に、持たないことで得られるものもあります。 駐車場を探さなくていい気楽さ。維持費のぶんを別のことに使える自由。 運転しなくていい安心。どちらを選んでも、失うものと得るものがあります。

06このカリキュラムが渡したかったもの

23の講と34枚の図解を通して渡したかったのは、車の知識そのものではありません。 知識は変わります。制度も相場も、数年で古くなります。

渡したかったのは、この3つでした。

1自分の数字を持つこと。年間走行距離、高速の比率、駐車場の幅、出せる年間コスト。数字を持っている人は、店頭でも、ネットの書き込みの前でも迷いません
2総額で考えること。月々の支払額ではなく、買った額から手放した額を引いて維持費を足した金額。これが本当のお金です
3その場で決めないこと。本当に良い条件なら、翌日でも良い条件のままです。急がせる理由がある側の都合に、付き合う必要はありません

この3つは、車以外にも効きます。家を買うときも、大きな契約をするときも、同じです。 車の買い方を学ぶことは、大きな買い物との向き合い方を学ぶことでもありました。

最後に

人生で一番大きな買い物は何ですかと聞かれたら、家、車、と答える人が多いでしょう。 たしかに金額は大きい。でも、家も車も、それ自体が目的ではありません。

家は、そこで暮らすためのもの。車は、行きたい場所へ行くためのもの。 道具にお金を払っているのではなく、その先にある生活にお金を払っているのです。

だから、いちばん大事な問いは「どの車を買うか」ではありません。 どこへ行きたいかです。 誰を乗せて、どこへ行って、何をしたいのか。それが決まれば、車は自然に決まります。 決まらないなら、まだ選ぶ時期ではないのかもしれません。

このカリキュラムが、あなたの「行きたい場所」に少しでも近づく助けになれば、それ以上のことはありません。 いい1台に出会えますように。あるいは、車のない身軽な暮らしが、あなたに合っていますように。 どちらを選んでも、自分で決めたのなら、それが正解です。

今日、ひとつだけ

紙に、行きたい場所を3つ書いてみてください。近くでも、遠くでもかまいません。 誰と行きたいかも書き添えて。 その3行が、あなたの車選びの、いちばん最初の条件です。 ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

出典と注記