中古車で失敗する人と、うまく買う人の差は、知識の量ではありません。 見るべきところを、決められた順番で見るかどうかだけです。 ここでは、情報の読み方・現車の見方・書類の確認・相場の調べ方を、そのまま使える形でお渡しします。 印刷して店に持って行けるチェックリストも付けました。
新車は、同じ車種の同じグレードなら、どれを買っても中身は同じです。 中古車はちがいます。同じ車種・同じ年式・同じ走行距離でも、1台ずつ状態がちがいます。
前の持ち主が、どんな道を、どんな運転で、どう手入れして乗ってきたか。 それが全部その1台に残っています。だから中古車選びは「車種選び」ではなく「個体選び」なのです。
車種を決めるのは第7講までの作業です。 この講から先は、絞った車種の中で、状態のいい1台を見つける作業になります。 「この車種が欲しい」で止まらず、「この個体は買っていいか」まで進んでください。
中古車の情報には、決まった項目が並んでいます。ひとつずつ意味を押さえます。
| 項目 | 意味 | 見るときの注意 |
|---|---|---|
| 年式 (初度登録年月) | 初めてナンバーが付いた年月 | モデルの世代とは別。同じ年式でも、その途中で改良されていることがある |
| 走行距離 | これまで走った距離 | 年1万kmが目安。少なすぎる車も、長く動かしていないという別の心配がある |
| 修復歴 | 車の骨格にあたる部分を修理・交換した履歴 | ぶつけて外板を直しただけなら修復歴には入りません。骨格に及んだかどうかが分かれ目 |
| 記録簿 | 点検や整備を受けた記録 | あるかないかで、その車の育ち方が分かります。いちばん見てほしい項目 |
| 車検残 | 次の車検までの期間 | 残りが長いほど、当面の出費が少ない |
| ワンオーナー | 前の持ち主がひとりだけ | 履歴が追いやすい。ただし、それだけで良い車とは限らない |
| 保証 | 販売店やメーカーの保証の有無と内容 | 期間・距離・対象の部位を必ず書面で確認 |
修復歴ありの車が、必ずしも危険というわけではありません。 ただし、まっすぐ走らない、タイヤの減り方が偏る、雨漏りがするといった不具合が出ることがあります。 初めての中古車では、修復歴なしを選んでおくのが安全です。 価格が相場よりかなり安い車には、たいてい理由があります。
写真では分からないことが必ずあります。可能なかぎり、実物を見てから決めてください。 見る順番は、外から内へ、上から下へ。
| 確かめること | やり方 |
|---|---|
| まっすぐ走るか | 安全な直線で、ハンドルに軽く手を添えて走る。片方に寄っていかないか |
| 異音がないか | 音楽を消して走る。段差を越えたときの音、カーブでの音に注意 |
| ブレーキの効き | 踏んだときに、震えたり片側に取られたりしないか |
| 変速のようす | 加速のとき、変速のたびに大きな衝撃がないか |
| エアコン | 冷房と暖房の両方を入れてみる。においと効きを確認 |
| 警告灯 | エンジンをかけたとき、消えるべき警告灯が消えるか |
試乗できない、と言われる場合があります。それ自体は珍しいことではありませんが、 高額な買い物で、動かして確かめられないという事実は、判断材料として持っておいてください。
相場は、自分で調べられます。中古車の情報サイトで、車種・年式・走行距離をそろえて検索し、 出てきた価格を10台ぶんくらい眺めるだけで、だいたいの帯が見えます。
そのうえで、相場より明らかに安い個体を見つけたら、安い理由を聞いてください。 理由に納得できれば、それは買い得です。理由がはっきりしないなら、見送るのが賢明です。
| 安い理由 | 納得できるか |
|---|---|
| 走行距離が多い | 納得できる。距離と価格のつり合いを見る |
| 不人気な色、不人気なグレード | 納得できる。むしろ狙い目になりうる |
| 車検が残り少ない | 納得できる。車検費用を足して比べればよい |
| 修復歴がある | 内容による。どこをどう直したかを具体的に聞く |
| 説明が曖昧、書面がない | 納得できない。見送る |
第3講で扱った話が、ここで効いてきます。 ある会社が作った車が、別の会社の名前で売られていることがあります。中身はほぼ同じです。
狙っている車が見つかったら、「この車に兄弟車はありますか」と一度調べてみてください。 人気ブランドの名前が付いているほうが高くなりやすいので、同じ中身で数万円から十数万円安く買えることがあります。 調べ方は簡単で、車種名と「OEM」または「兄弟車」で検索すれば出てきます。
中古車の情報サイトを開いて、気になる車種を1つ検索してみてください。 そして、いちばん安い個体といちばん高い個体を並べて、何がちがうのかを見比べてみる。 年式か、距離か、修復歴か、保証か。5分の作業で、この講の内容が自分のものになります。