第4講では、輸入車の世界の地図と維持の現実を見ました。この講は、その先の決断編です。 同じ予算を出したとき、国産の新車と、数年落ちの輸入車では、何がどうちがうのか。 数字で並べたうえで、最後は数字にならない部分の話をします。 第2部の締めくくりであり、いちばん個人の価値観が出る回です。
「日本車と外車、どっちがいいですか」。この問いには答えがありません。 答えが出る形に変えましょう。
第4講で確認したとおり、「外車」とひとくくりにできるものはありません。 そして、国産車にも壊れる個体はあり、輸入車にも手のかからない個体はあります。 大事なのは平均の話ではなく、あなたが買おうとしている、その1台の話です。
感情を抜きにして比べられるのは、この3つです。
輸入車は壊れやすい、とよく言われます。ただし正確には、 壊れやすいというより「手を入れる前提で作られている」というほうが近いです。 定期的に部品を交換しながら乗る、という文化の中で作られた車があります。 国産車は、その間隔が長くても走り続けるように作られています。 どちらが良い悪いではなく、前提がちがう。この差が、日本での使い方だと維持費の差になって出てきます。
海を渡ってくる費用と、流通量の少なさで、部品の価格は上がります。 専用の工具や診断機が要る作業では、工賃も上がります。 ただしこれは、日本でよく売れている輸入車ほど小さくなる差でもあります。 台数が多ければ部品が流通し、扱える工場も増えるからです。
輸入車は、新車からの数年で国産車より値下がりが大きくなりやすい傾向があります。 これは買うときには不利ですが、中古で買う人にとっては最大の狙いどころです。 同じ予算で、新車の国産車より上等な作りの1台に届くことがあります。
| 国産車 | 輸入車 | |
|---|---|---|
| 手のかかりやすさ | 間隔が長くても走り続けるように作られている | 定期的に手を入れる前提の車がある |
| 部品代・工賃 | 流通量が多く安定。相見積もりも取りやすい | 上がりやすい。ただし売れている車種ほど差は小さい |
| 直せる場所 | どこにでもある | 正規店か専門店。距離を確認する必要がある |
| 手放すときの値段 | 下がりにくい車種が多い | 数年での値下がりが大きくなりやすい |
| 中古で買うとき | 相場が安定していて選びやすい | 値下がりのぶん、同じ予算で上等な1台に届く |
ここが、この講の中心です。同じ金額を出したときの選択肢を、3つ並べて考えます。
| 選択肢 | 買えるもの | 強み | 弱み |
|---|---|---|---|
| A 国産の新車 | その予算で買える、いちばん新しい国産車 | 保証が付く。装備が最新。維持が読みやすい | クラスは予算なり。値下がりの大きい期間を引き受ける |
| B 数年落ちの輸入車 | 新車価格の高い輸入車が、値下がりを経てその予算帯に降りてきたもの | 作りが上等。高速の快適さと内装の質感 | 保証の残りと整備先を確認。維持費は上がりやすい |
| C 中古の国産上級車 | ひとクラス上の国産車の中古 | 維持のしやすさはそのまま、クラスが上がる | 年式が下がるぶん、装備が古いことがある |
どれが正解ということはありません。ただ、第8講で作った年間コストの表に入れて計算すると、順位が見えます。 そして計算してみると、思っていた順位と逆になることが実際にあります。
ここまで数字の話をしてきましたが、正直に書きます。 車の価値は、数字だけでは決まりません。
好きな車に乗っているときの気分。ドアを閉めたときの音。 自分の車を眺めて「いいな」と思える時間。それらは家計簿には載りませんが、確かに価値です。
数年落ちの輸入車を選ぶ人の多くは、この部分にお金を払っています。 それは間違った買い物ではありません。維持費を数えたうえで、それでも欲しいと判断したのなら、正しい買い物です。
数字を数えないまま憧れで買うのは、別の話です。 修理代が払えずに手放すことになると、その車を好きだった気持ちまで失います。 憧れを守るために、数えるのです。 第4講の図解⑤(現実チェック10項目)は、そのための紙でした。
5番目が大事です。迷っているうちは、まだ選ばなくていいのです。 車は逃げません。今回は国産にして、次の1台で輸入車に挑戦する、という順番もあります。 1台目で車の見方を覚えてから、というのは、決して遠回りではありません。
自分の予算を1つ決めて、その金額で「国産の新車」「数年落ちの輸入車」を1台ずつ探してみてください。 中古車の情報サイトで、価格の上限を設定して検索するだけです。 同じ金額で、こんなにちがうものが並ぶのかと驚くはずです。 その驚きが、この講のいちばんの学びです。