この講は、このカリキュラムの中でいちばん削ってはいけない話です。 車の事故は、自分の生活だけでなく、他人の人生にも関わります。 保険料は維持費の中で大きな割合を占めますが、ここを削って浮かせるお金は、 もしものときに払えない金額に化けます。仕組みを知って、必要なものを選べるようになりましょう。
車には、加入が義務づけられた自賠責保険があります。車検のときに一緒に払っているので、 「保険には入っている」と思っている人がいます。でも、これは大きな誤解です。
| 自賠責保険(義務) | 任意保険 | |
|---|---|---|
| 対象 | 相手のけが・死亡のみ | けが・死亡に加えて、相手の車や物、自分の車、自分のけがも |
| 上限 | 金額の上限が決まっている | 無制限に設定できる |
| 相手の車の修理 | 対象外 | 対象(対物賠償) |
| 壊した建物や設備 | 対象外 | 対象(対物賠償) |
| 自分の車 | 対象外 | 対象にできる(車両保険) |
| 自分や同乗者のけが | 対象外 | 対象にできる(人身傷害など) |
交差点で出会い頭にぶつかり、相手が大けがをした。相手の車は大破。 さらに、はずみで店舗のシャッターと看板を壊した。 自賠責でまかなえるのは、このうち相手のけがの一部だけです。 残りはすべて自分で払うことになります。 任意保険は「任意」という名前ですが、実質的には必須だと考えてください。
保険の証券を見ると項目が並んでいますが、大きくは6つです。
| 部品 | 誰・何を守るか | おすすめの考え方 |
|---|---|---|
| 対人賠償 | 相手のけが・死亡 | 無制限。ここを削る理由はありません |
| 対物賠償 | 相手の車、建物、設備、線路など | 無制限。高額になる例が現実にあります |
| 人身傷害 | 自分と同乗者のけが(過失に関係なく) | 入っておきたい。治療費と収入の補償になります |
| 搭乗者傷害 | 乗っている人のけが(決まった金額を支払う形) | 人身傷害と役割が重なる部分があります |
| 車両保険 | 自分の車 | 付けるかどうかは判断が分かれます(次章) |
| 特約 | 弁護士費用、レンタカー、ロードサービスなど | 使う場面を想像して選ぶ |
保険料を抑えたいとき、上限額を下げれば安くなります。でも、対人と対物だけはやめてください。
賠償の金額は、こちらの都合では決まりません。 相手が働き盛りの人だったら、高価な車だったら、壊したのが線路や信号だったら。 上限を超えた分は、自分の財産から払うことになります。
無制限にしても、上限を設けた場合との保険料の差は、思ったほど大きくありません。 ここは迷わず無制限を選んでください。この講で伝えたいことの半分は、この一点です。
ここは判断が分かれる部分です。判断のものさしを渡します。
車両保険の年間保険料 × 乗る年数と、その車の価値を比べてください。 前者が後者を超えるなら、外す判断にも合理性があります。 ただし、ローンが残っている間は別です。車がなくなっても支払いは残るからです。
等級とは、事故の有無によって保険料の割引率が変わる仕組みです。 無事故を続けると等級が上がり、保険料が下がります。事故で保険を使うと等級が下がります。
| 状況 | 等級の動き |
|---|---|
| 1年間、保険を使わなかった | 1つ上がる。割引が大きくなる |
| 事故で保険を使った | 種類によって3つ下がる、または1つ下がる |
| 等級が下がったあと | 数年間、割引が小さい状態が続きます |
使うと等級が下がり、そのあと数年間、保険料が高い状態が続きます。 つまり修理代より、その後に増える保険料の合計のほうが大きくなることがあります。 修理代が小さい場合は、自分で払ったほうが得になる場面があります。 事故のとき、保険会社に「使った場合と使わなかった場合の差額」を聞いてください。教えてもらえます。
免許を取ったばかりの人の保険料は、驚くほど高くなります。理由は明確です。 統計として、若い年齢層の事故の割合が高いからです。
保険は、同じリスクを持つ人たちで負担を分け合う仕組みです。 事故の起きやすさが高い層は、その分だけ負担が大きくなります。 これは個人が責められている話ではなく、統計にもとづく仕組みの話です。
そして何より、無事故を続けることが最大の節約です。 等級が上がるほど保険料は下がっていきます。数年続ければ、はっきり差が出ます。
家にある保険の証券を出して、対人賠償と対物賠償の欄を見てください。 「無制限」と書いてありますか。書いてあれば安心です。 金額が入っていたら、次の更新で無制限にできるか確認してください。 持っていない人は、家族に見せてもらってください。読み方が分かるだけで、大人になったときに困りません。