日本でいちばん古い流れをくむ自動車メーカーのひとつで、電気自動車を世界に先駆けて量産した会社。 同時に、経営の混乱を何度も経験してきた会社でもあります。 技術の評価と、経営の評価。この2つを分けて見ないと、日産という会社は正しくつかめません。
日産を一言でいうと、"次の動力"をいちばん先に出してきた会社です。
2010年のリーフは、量産の電気自動車としては世界の先駆けでした。 エンジンで発電してモーターで走るe-POWERも、日産が広めた考え方です。 技術で先に出る。この姿勢は戦前から一貫しています。
ただし、その技術力が経営の安定と直結してこなかったのが、この会社の難しいところです。 1990年代の経営危機、海外メーカーとの提携、2018年以降の混乱。 車は良いのに会社が揺れる、という状態を何度も繰り返してきました。
車を評価するのと、会社を評価するのは別です。 日産の車が気に入ったなら、そこは自信を持っていい。 ただし長く乗るつもりなら、部品の供給や販売店の数といった"会社の体力"にかかわる部分は、買う前に確かめておくと安心です。
出発点は1911年の快進社という会社です。ここで作られた車の名前が、のちのダットサンにつながります。 1933年に自動車製造株式会社が設立され、翌1934年に日産自動車と名乗りました。 横浜の工場で本格的な量産を始めた、日本の自動車産業の草分けのひとつです。
1952年、イギリスのオースチンと技術提携を結び、外国の技術を吸収します。 1959年のブルーバード、1960年のセドリック。日本の道路がまだ舗装されきっていない時代に、 海外のラリーへ出て賞を取り、日本車の耐久性を証明していきました。
1966年、スカイラインを作っていたプリンス自動車工業と合併します。 ここで日産に、スカイラインという名前と、それを作っていた技術者たちが加わりました。 1969年に登場したフェアレディZは北米で大成功し、日本車のイメージを変えます。
1980年代の終わりには、「1990年までに走りで世界一になる」という社内の目標のもとで、 スカイラインGT-Rの復活、フェアレディZ、インフィニティ(北米向け高級ブランド)などが一気に出ました。 いま中古車市場で高値が付いているのは、この時期の車が多いです。
1990年代、バブル崩壊後に経営が悪化します。 1999年にフランスのルノーと資本提携を結び、送り込まれた経営者のもとで大規模な立て直しが行われました。 工場の閉鎖や取引先の見直しをともなう、痛みの大きい改革でした。
2010年にリーフを出し、電気自動車で世界の先頭に立ちます。2016年には三菱自動車を傘下に収めました。 しかし2018年、その経営者の逮捕をきっかけに会社は再び混乱します。 2024年から2025年にはホンダとの経営統合が協議されましたが、まとまりませんでした。
技術で先に出て、経営で揺れる。日産の歴史は、この繰り返しとして読むと分かりやすいです。
| 背骨 | 中身 | 買う人にとっての意味 |
|---|---|---|
| 電気自動車 | 2010年のリーフ以来の量産の実績。軽EVのサクラまで広げた | 電池や制御の経験が長い。整備できる店も増えている |
| e-POWER | エンジンは発電に使い、走るのはモーター。充電は不要 | 電気自動車のような静かさと加速を、充電設備なしで得られる |
| 運転支援 | プロパイロット。高速道路での車間と車線の維持 | 長距離の負担が減る |
| 四輪駆動と走り | スカイラインGT-Rから続く技術。四輪の駆動力を細かく配分する制御 | 雪道や高速での安定に効いている |
| 耐久性 | 戦前からのラリーや過酷な環境での実績 | 商用車や四駆は世界の厳しい地域で使われている |
静かさと、アクセルを踏んだ瞬間から力が出る感じ。これはモーターで走る車の特徴です。 ガソリン車から乗り換えると、多くの人が最初に驚くところです。 試乗せずに決めるのがいちばんもったいない会社だと言えます。
| 系統 | 流れ | いま買うなら |
|---|---|---|
| 大衆・コンパクト | ダットサン(1931) → ブルーバード(1959) → サニー(1966) → マーチ → ノート(2005) | ノート/オーラ |
| 上級・セダン | セドリック(1960) → ローレル → シーマ(1988) → フーガ | スカイライン |
| スカイライン系 | プリンス由来(1957) → 日産へ(1966) → GT-R(1969) → R32(1989) → R35(2007) | スカイライン |
| スポーツ | フェアレディ → フェアレディZ(1969) → Z32 → 350Z → 現行Z(2022) | フェアレディZ |
| SUV・四駆 | パトロール(1951) → サファリ → テラノ → エクストレイル(2000) → キックス | エクストレイル/キックス |
| ミニバン・商用 | キャラバン(1973) → バネット → セレナ(1991) → エルグランド(1997) | セレナ |
| 電動化 | リーフ(2010) → ノート e-POWER(2016) → アリア → サクラ(2022) | サクラ/ノート e-POWER |
"よく見かける言われ方"を集めた項目です。書き込みは不満を持った人のほうが書く傾向があります。数字と並べて読んでください。観測は2026年8月時点です。
日産に関する書き込みは、車の話と経営の話が混ざりやすいのが特徴です。 「日産はもうだめだ」という書き込みの多くは、乗った感想ではなくニュースの感想です。 車を選ぶときは、まず試乗の印象を軸にしてください。そのうえで、部品と販売店という現実的な点だけを確認すれば十分です。
| 項目 | 日産の傾向 |
|---|---|
| 部品の入手 | 現行に近い車種は問題なし。生産終了から年数がたった車は確認が要る |
| 修理・整備 | 電動系を扱える工場は増えている。ただし地域によって販売店の数に差がある |
| 中古の電気自動車 | 電池の劣化具合が価格を大きく左右する。残量表示や保証の残りを必ず確認 |
| リセールバリュー | 全体には控えめ。一部のスポーツ車と四駆は例外的に高い |
| 買うときの価格 | 同等の他社車より中古相場が落ち着いていることがあり、狙い目になる場面も |
中古の電気自動車は、車体の状態よりも電池の状態のほうが重要です。見るべき点は第10講「中古車の目利き入門」でくわしく扱います。
機会があれば、e-POWERか電気自動車に一度だけ試乗してみてください。 買う予定がなくてもかまいません。エンジンの音がしない加速を体で知っておくと、 これから車を選ぶときの物差しがひとつ増えます。