半年前、AIと一緒に作ったツールがありました。ちゃんと動いて、便利で、周りにも見せた。
それが今朝、動いていません。この半年、コードには指一本触れていないのに、です。
「何もしていないのに壊れた」。パソコンに詳しい人ほど笑う台詞ですが、Webの世界では、これは実際に起きます。しかも頻繁に。
この講のゴールは、「作る」と「動かし続ける」が別の仕事だと知り、自分がいま何をどれだけ"飼っているか"を一覧にできるようになることです。
家にたとえます。
家を建てるのは一度きりの仕事です。設計して、建てて、引き渡したら完成。でも、住み続けるには別の仕事が要ります。雨漏りは毎年のように来る。シロアリも来る。庭の草は放っておいても伸びる。建てた人の腕が良くても、雨は降るからです。
作ったプログラムもまったく同じです。完成した瞬間のコードは、その日の世界に合わせて建っています。ところが世界のほうが動く。借りている部品が新しくなる、置き場所のサービスが仕様を変える、無料だったものが有料になる、連携先が窓口を閉じる。あなたが何もしなくても、周りが変わることで壊れる。「何もしていないのに」は、正確には「何もしていないから」なのです。
ここで大事な発想の転換があります。公開したものは、作品ではなく"生き物"です。作った数だけ、餌をやる相手が増える。この感覚があるかないかで、この先の行動がぜんぶ変わります。むやみに増やさなくなり、増やすときは世話の段取りを考えるようになり、たまに様子を見るようになる。
逆に、この感覚が無いまま作る楽しさだけで走ると、気づいたときには、動いているのか止まっているのかも分からない公開物が10個並びます。1個ずつは小さくても、10個の面倒は見きれません。
自分の飼っているものを、一覧表にします。紙でもメモアプリでも構いません。
縦に、自分が作って公開したもの・動かしているものを全部書き出します。まだ自分の一枚しかない人は、それを1行目に書いてください。この表は、この先増えるたびに育てる台帳になります。
横に、3つの列を作ります。
埋めてみて、「分からない」がいくつあったかを数えてください。それがいまの、あなたの家の"点検していない箇所"の数です。3列目に「いいえ」や「分からない」が並んでも、いまは落ち込まなくて大丈夫。戻せるようにする方法は第13講でやります。
そのまま貼って使えます。
作った直後の勢いで、次々に増やすこと。
AIとの開発は楽しく、2作目3作目はどんどん速く作れます。週末のたびに新作が生まれ、1ヶ月後には公開物が8個。ここまでは本当に気持ちがいい。問題は3ヶ月後です。8個のうちどれかが静かに止まり、どれが止まっているか自分でも分からず、直す気力も起きない。楽しかったはずの場所が、雨漏りだらけの空き家街になります。
増やすこと自体は悪くありません。ルールを1つだけ足してください。1つ公開するたびに、さっきの一覧表に1行足す。行を足すのが億劫に感じたら、それは"飼える上限"に近づいたサインです。