こんにちは。秋元進吾です。
前回、学び方の道具を渡しました。覚えていますか。
全体をざっくり地図にして、気になるマスから拡大していく。
今日から、その道具をさっそく使っていきます。
最初の相手は、いちばん大きくて、いちばん見えないものにしました。
社会の仕組みです。
朝起きて、蛇口をひねると水が出ます。
ごみを出すと、いつのまにか消えています。
信号は光っていて、道路は舗装されていて、救急車は電話一本で来ます。
だれがやっているんでしょうか。
ふだん、考えませんよね。それでいいんです。社会の仕組みは、うまく回っているときほど、見えません。止まった日にだけ、見える。断水した日に、はじめて水道の存在を思い出すのと同じです。
だから、社会の仕組みを「知らない」のは、当たり前のことです。生まれたときから中にいるものは、外から眺める機会がない。
今日は、この見えない仕組みを、1枚の地図にします。細かい話は全部あとまわしにして、まず全体がどう回っているかだけ。地図ですから、ざっくりでいいんです。
社会には無数の人と組織がいますが、お金の流れで見ると、登場人物はざっくり3人に整理できます。
呼び方はどうでもいいです。この3人のあいだを、お金と働きとサービスがぐるぐる回っている。それが社会の血流です。
回り方は、こうです。
これで1周。基本の循環です。
もちろん実際はもっと複雑です。でも、どんなに複雑な話も、だいたいこの1周のどこかの矢印を拡大した話です。ニュースでむずかしい経済の話が流れてきたら、「これは3人のうち、どこからどこへの矢印の話だろう」と考えてみてください。それだけで、聞こえ方が変わります。
3人の循環の中で、いちばん誤解されているのが税金だと思うので、ここだけ少し拡大します。
税金というと、取られるもの、というイメージが強いですよね。
では、今日の朝から数えてみます。
顔を洗った水は、浄水場と水道管を通ってきました。家を出て歩いた道路。渡った横断歩道の信号。夜道を照らす街灯。通った学校、借りた図書館の本。出したごみが収集される仕組み。何かあったときの救急車、警察、消防。
あなたは今日すでに、何度も、税金の使い道の上を歩いています。
道路も学校も消防も、ひとりでは買えません。だから、みんなで出し合って、みんなで使うものを買っている。
そして、その会費を何に使うかを決める係を選ぶ場が、選挙です。
前回、投票の話をしました。行くか行かないか、どこを選ぶかは、あなたが決めることです。それは変わりません。ただ、「会費の使い道を決める係を選ぶ場なんだ」と知っておくと、選挙のニュースの見え方が少し変わると思います。材料として、置いておきます。
行政の話を、もう少しだけ。
国と、県と、市や町。役割はざっくり、遠いほど大きな話、近いほど暮らしの話です。
住民票、子育ての手続き、ごみの出し方、健康診断、生活の相談。暮らしの困りごとは、だいたい市役所や町役場が窓口です。
ここで覚えておいてほしいのは、ひとつだけです。
困りごとには、たいてい、担当の窓口がすでにあります。
前回、188(消費者ホットライン)の話をしました。あれも仕組みのひとつです。お金の相談、仕事の相談、家族の相談。世の中には、無料で相談できる窓口が思っているよりたくさん用意されています。
仕組みを知っている人は、ひとりで抱える時間が短くて済みます。窓口の名前を全部覚える必要はありません。「たぶん窓口がある」と知っているだけで、探し始めるのが早くなります。
地図に、もうひとつ大事な線を足します。
あなたがパン屋さんで払った300円は、消えたのではありません。
パン屋さんの売上になって、小麦を仕入れるお金になって、店員さんの給料になって、その店員さんがどこかのお店で払うお金になります。
そして、あなたの給料も、もとをたどれば、だれかが払ったお金です。
こう見えてくると、社会が「自分とは関係ない、大きな何か」ではなくなります。あなたがお金を払うたび、働くたび、あなたはこの血流の一部です。もう回している側なんです。
お金の流れの話は、それだけで何本も書けるので、この地図ではここまで。次回、じっくりやります。
さて、今日の1枚の地図には、拡大したいマスがたくさん残っています。
給料明細の、あの差し引かれているものの正体。だまされないための、だましの仕組み。税金の行き先のもっと詳しいところ。会社って、そもそも何者なのか。学校は、なぜこの形なのか。
ひとつずつ拡大していく連載を、ここから始めます。
連載の棚は、こちらに用意しました。公開済みの仕組みの話も、ここにまとめてあります。
世の中の仕組みの解説には、「知らないと損する」「知らないやつが悪い」という煽り方がよくあります。この連載は、その逆の立場で書きます。知らなかったことを責めない。ただ、知ると楽になることを、順番に置いていく。
それから、約束をひとつ。
この連載は、どの立場が正しいとか、だれを支持するとかを、いっさい言いません。仕組みの説明だけをします。説明を読んで、どう考えるか。判断は、いつもあなたの主導権です。
今日やることは、ひとつだけです。
ジュースでも、電車賃でも、何でもいいです。
そのお金が、次にだれのところへ行くか。一往復だけ、想像してみてください。
それだけで、今日の地図の1マスが、自分の目で見えたことになります。
人生は、たとえ遠回りしても、いつでも今からリニューアルできます。
社会の仕組みも、同じです。見えなかったものが見えるようになるのに、遅すぎることはありません。
次回は、この地図の「お金」の矢印を拡大します。お金の話を、誰も学校で教えてくれなかった、です。
秋元進吾でした。