こんにちは。秋元進吾です。
前回、18歳になったら何が変わるか、という話をしました。できることが増えて、守りがいくつか外れる。そういう日が来る、と。
読みながら、こう思った方がいると思います。
増えるのはわかった。で、覚えることが多すぎませんか。
契約のこと、お金のこと、社会の仕組み。これから覚えることが、山ほどあります。全部を学校で習ってから世の中に出られたら楽ですが、そうはいきません。世の中に出てからのほうが、覚えることは多いんです。
だから第4部の2本目は、中身より先に、道具を渡します。
これから何を、どう学ぶか。
この道具さえ手元にあれば、このあとの社会の話も、お金の話も、仕事の話も、自分で進められるようになります。
先に、いちばん大事なことを言います。
学校の勉強と、世の中の学びは、ルールの違う競技です。
ここまで違うと、もう別の競技です。
だから、学校の勉強が苦手だった人に、先に言っておきたいことがあります。
学校の点数は、「学校方式との相性」の点数です。あなたの、学ぶ力そのものの点数ではありません。決まった範囲を、決まった順番で、決まった日までに覚えるのが苦手だっただけで、世の中方式なら伸びる人は、いくらでもいます。
逆に、学校の勉強が得意だった人は、世の中方式に切り替えるのに少し時間がかかることがあります。範囲と順番を、誰も決めてくれなくなるからです。
どちらにしても、ここからは同じスタートラインです。
今日は、世の中方式の道具を4つ渡します。全部、この連載でこっそり使ってきたものです。
学校方式の学び方は、教科書の1ページ目から、順番に、完璧に進むやり方でした。
世の中では、これをやめます。かわりに、こうします。
まず、全体をざっくり1枚の地図にする。細かいことは、いったん全部捨てる。それから、気になるマスを、ひとつだけ拡大する。
なぜこの順番なのか。全体を知らないまま細かいところから入ると、自分がいまどこにいるのか、わからなくなるからです。位置がわからないと、人は不安になって、やめたくなります。
地図が先にあると、迷子になりません。わからないことが出てきても、「これは地図のどのへんの話か」さえわかれば、こわくない。わからないまま、先に進めます。
わからないまま進んでいい、というのが、学校方式との大きな違いです。学校では、わからないところを残すと叱られました。世の中では、地図さえ持っていれば、細部は必要になったときに拡大すればいいんです。
この道具は、次回、実際に使ってみせます。社会の仕組みという、いちばん大きな相手で。
ふたつめは、今日からすぐ使える道具です。
何かを調べる前に、自分の予想を先に書く。
30秒でいいです。「たぶん、こういうことじゃないか」を1行。それから、調べる。
たったこれだけで、頭への残り方がまるで変わります。
理由は、差です。人は、自分の予想と本当の答えの「差」があったところだけを、強く覚えます。予想なしで読んだものは、ふうん、で通り過ぎていく。予想してから読んだものは、「え、そうだったのか」が発生する。その「え」のところが、記憶に刻まれます。
つまり、、、間違えるために、書くんです。
外れた予想ほど、記憶に残ります。そして、この予想は誰にも見せません。外しても失点はゼロです。学校のテストでは間違いは減点でしたが、世の中の学びでは、間違えた予想は得点です。
第8講で、言葉はまず自分に言うもの、と書きました。学びも同じです。外に取りに行く前に、まず自分の中にあるものを出す。順番はいつも、自分が先です。
学校では、予習が偉いとされていました。いつか使うかもしれないものを、前もって全部覚えておく方式です。
世の中では、逆になる場面が多いです。
必要になってから学ぶ。
これ、ずるでも手抜きでもありません。むしろ理にかなっています。使う予定のあるものは、覚えようとしなくても覚えるからです。来週それで何かをする、と決まっているものは、頭が勝手に本気になります。
危ないのは、「全部覚えてから始めよう」のほうです。あれは、たいてい始まりません。範囲のない世の中で「全部」を待っていたら、一生準備で終わります。
第7講で、口で説明しないで作って見せる、という話をしました。あれは、学び方の話でもあったんです。作りながら覚えたことは、抜けません。手が覚えるからです。
先に始めて、足りないところを、その都度学ぶ。順番が逆に見えますが、世の中では、これが表です。
最後の道具は、確かめ方です。
世の中の学びには、テストがありません。覚えたかどうか、どうやって確かめればいいのか。
人に、説明してみてください。
説明が、途中で止まります。その止まったところが、わかっていないところです。テストより正確に、ピンポイントで見つかります。すらすら言えたところは、もう大丈夫です。
相手は、誰でもいいです。家族でも、友達でも。第7講で「面白がってくれる人を、別の場所に1人」と書きましたが、あの1人は、ここでも使えます。相手がいなければ、ノートに書いて説明するのでも、効果はほとんど同じです。
そして、これは確かめ方であると同時に、いちばん強い覚え方でもあります。人に教えたことは、教わったことの倍、残ります。
学んだら、誰かに話す。それだけで、学びが二周します。
道具を4つ渡したところで、ひとつ、白状しておきたいことがあります。
第9講で、わたしは興味や関心があちこちに動くたちで、重要な2個を選ぶことすら難しかった、と書きました。仕事の段取りでは、これは弱点です。
でも、学びの世界では、これが逆転します。
気移りというのは、「次を知りたい」という気持ちのことです。学びの燃料は、義務ではなくて、これなんです。
興味が別のところへ飛ぶのは、集中力がないのではありません。地図の別のマスが光っただけです。飛んでいい。地図さえ持っていれば、あとで戻ってこられます。第9講で書いたとおり、大事なのはやめないことではなく、戻ってくることなので。
学校では、脱線は叱られました。世の中の学びでは、脱線した先で拾ったものが、あとで本線とつながることが、本当によくあります。
わたしはいまも、勉強している側にいます。知りたいことだらけなんで。
最後に、「何を」のほうの話を短く。
学ぶものに迷ったら、この一問で決めてください。
第1講で、選べるカードを増やす話をしました。学びの目的は、点数でも資格でもなくて、最終的にはこれです。知っていることが増えると、選べることが増える。選べることが増えると、人生の主導権が手元に戻ってきます。
増えるなら、どこから学んでも正解です。順番は、気になったところから。地図があるので、迷子にはなりません。
今日やることは、ひとつだけです。
天気のことでも、言葉の意味でも、何でもいいです。
予想が当たったら、それはもう知っていたことです。
外れたら、大成功です。今日いちばん記憶に残るのが、それなので。
人生は、たとえ遠回りしても、いつでも今からリニューアルできます。
学び方も、同じです。今日から変えられます。
秋元進吾でした。