わが家は、バトンリレーでできている更地から完成までの、職業ぜんぶ図鑑
建てるのは、たくさんの手のリレー。
家づくりは、運動会だった
1枚の契約書の向こうで、動き出す人たち
こんにちは。秋元進吾です。
今日は、ちょっと運動会みたいな話をします。
以前、家の「お金の全部の話」という長い記事を書きました。
今日はその姉妹編・・・お金ではなく、"人"の話です。
家を建てるとき、契約書にサインをするのは、あなた1人です。
でも実は、その1枚の紙の向こうで、ものすごい人数が動き出します。
不動産会社さん、司法書士さん、建築士さん、銀行の担当さん。
地盤を調べる人、足場を組む人、基礎を打つ人。
大工さん、屋根屋さん、電気屋さん、クロス屋さん・・・。
一軒の家づくりに関わる人は、のべ数十人。
職人さんの人数まで数えると、100人を超えることもある、と言われます。
あなた1人のサインに対して、100人。
この数字のギャップ、ちょっとすごくないですか。
そして、この100人はバラバラに働いているのではありません。
誰かが仕事を終えると、次の人にバトンが渡る。
家づくりの正体は、"職業のバトンリレー"なんです。
しかも面白いことに、コースは1本ではありません。
"お金"・"書類"・"現場"の3つのレーンが、同時に走っています。
「工事はまだ始まっていないのに、書類とお金のレーンはもう全力疾走」なんてことが、ふつうに起きます。
この記事では、そのリレーの全体を、図解でまるごとお見せします。
この記事でわかること
・どんな職業の人が、どの順番で登場するのか
・誰から誰へ、何のバトンが渡るのか
・どこが同時進行になるのか(3レーンのしくみ)
・そして・・・鍵をもらった日が"本当のゴール"ではない、という最後の裏切り
謎かけを、ひとつ置いておきますね。
このリレーには、スタートからゴールまで、"いちばん長く走り続ける人"がいます。
大工さんではありません。さて、誰でしょう。
答えは第4章でわかります。
長い記事なので、目次から好きな章だけつまみ食いで大丈夫です。
図だけ眺めて回るのも大歓迎です。
それでは、位置について・・・よーい、どん。
3レーン同時進行の全体図
迷子になったら、この章に戻ってきてください
まず、リレーのコース全体を見わたしましょう。
レーンは3本。色分けして進みます。
※土地探しから入居まで、ぜんぶで1年〜1年半くらいが一般的な目安と言われます。区間の分け方は、この記事では「働く人目線」で7つにしました(あなた目線の段取り12ステップは、姉妹記事で書いています)。
こうして見ると、よくわかります。
3本のレーンは別々に走っているようで、要所要所でバトンを渡し合い、
最後の区間で1本に合流して・・・"あなたの家の鍵"という、たった1つのバトンになるんです。
※そして、鍵のあとにもうひとつ"延長戦"の区間があります。この記事の最後のお楽しみに。
ここから先の章では、各レーンをゆっくり走り直します。
迷子になったら、いつでもこのマップに戻ってきてくださいね。
第1走者たち・・・土地のバトン
現場はまだ静か。でも紙の上は、もう全力疾走
「土地を買う」と聞くと、土の上の出来事に思えますよね。
でも実は、この区間で土は1グラムも動きません。
動くのは、ぜんぶ"紙と印鑑"。土地のバトンは、書類レーンから始まります。
ここでのポイントは、ひとつだけ。
"司法書士さんと宅地建物取引士さんは、あなたの味方をする審判役"だということ。
大きなお金が動く場面に、国家資格を持つ第三者がちゃんと立ち会う仕組みになっているんですね。
土地というバトンは、こうして安全に、あなたの手に渡ります。
(手付金や諸費用など、この区間の"お金の中身"は姉妹記事にくわしく書いています。あとで気になったらどうぞ)
設計と書類のバトン
図面という設計図バトンが、法律のチェックを受けるまで
土地が決まったら、次のバトンは「図面」です。
ここで、ちょっとした常識の裏切りをひとつ。
「家はハウスメーカーが建てる」と思われがちですが・・・でも実は、ハウスメーカーや工務店の社員さんが、釘を打つことはほとんどありません。
会社の中の人たちの仕事は、"リレーの段取りを組むこと"。実際に建てるのは、このあと登場する職人さんたちです。
確認済証と、完成後にもらう検査済証は、
住宅ローンにも、将来の売却にも関わってくる大切な書類と言われます。
バトンというより、"一生モノの記念品"として保管してください。
お金のレーン・・・ずっと並走している人たち
現場が盛り上がっている裏で、静かに走り続けるレーン
お金のレーンの特徴は、"ゴールまでずっと並走している"ことです。
現場のバトンが何度も持ち主を変えるのに対して、こちらの走者は少数精鋭。
そのぶん、要所要所で確実に登場します。
お金のレーンは、目立ちません。
上棟のような感動の場面も、ありません。
でも、このレーンが止まると、リレー全体が止まります。
着工金が払えないと、現場は始まらない。ローンが実行されないと、鍵は渡らない。
"地味だけど、全レーンの心臓部"。それがお金のレーンです。
(金利のこと、つなぎ融資の費用のこと、「借りられる額」と「返しても笑える額」の違い・・・お金レーンの中身は、姉妹記事でたっぷり書きました)
現場のバトン・前半・・・地面の下の主役たち
完成したら見えなくなる仕事ほど、大事だったりする
いよいよ現場レーンです。
最初の走者は、地面の下を受け持つ人たち。
さて・・・ここで、はじめにの謎かけの答え合わせです。
「スタートからゴールまで、いちばん長く走り続ける人は誰?」
そして実は、正解がもう1人います。
"あなた"です。
土地探しからゴールまで、ずっと走り続けているもう1人の伴走者。
あなたも、このリレーの立派なメンバーなんですよ。
現場のバトン・後半・・・職人さん入場順
お祭りの屋台みたいに、専門家が増えていく
基礎ができたら、現場はいちばんにぎやかな季節に入ります。
ここからの入場順を、タイムラインでどうぞ。
- 🏗️大工さんチーム+クレーンの運転手さん
上棟(じょうとう)。朝は基礎だけだった土地に、夕方には家の骨組みが立ちます。多くの人が「いちばん感動した」と言う日です。 - 🏔️屋根屋さん・板金屋さん大工さんと同時進行
骨組みができたら、まず屋根。雨から家を守る順番が最優先です。 - 🪟サッシ屋さん
窓とサッシを取り付けて、家の中を雨風から閉じられるように。 - 💡電気工事士さん・設備屋さん(給排水)2職種が同時進行
壁がまだ開いているうちに、配線と配管を仕込みます。完成したら二度と見えない仕事です。 - 🧣断熱屋さん
壁や天井に断熱材を入れる、冬の暖かさと夏の涼しさの決め手。 - 🧱外壁屋さん(サイディング)・左官屋さん外と中で同時進行
外まわりの化粧が進む間、家の中では大工さんが床や棚を作っています。 - 🎨クロス屋さん・塗装屋さん・タイル屋さん
内装の仕上げ職人たちが、次々に入れかわりで登場します。 - 🚪建具屋さん・設備の取り付け
ドア・収納・キッチン・お風呂・トイレ。「家」が「わが家」の顔になっていきます。 - 🧹ハウスクリーニングの人
工事のほこりを落として、ピカピカに。現場が"商品"になる瞬間です。 - 🌳外構(エクステリア)業者さん家の完成と同時進行しがち
駐車場・フェンス・アプローチ・庭。家の外の暮らしを作る最終走者です。
大工さん、屋根屋さん、板金屋さん、サッシ屋さん、電気屋さん、設備屋さん、断熱屋さん、外壁屋さん、左官屋さん、クロス屋さん、塗装屋さん、タイル屋さん、建具屋さん・・・。
数えるだけで、息が切れてきますね。
ひとつの家は、これだけの専門家の"1区間ずつの全力"でできています。
外壁屋さん
大工さん
電気屋さん
リレーと言いつつ、この区間はバトンの受け渡しが重なり合う、駅伝と綱引きの中間みたいな状態。
この交通整理をしているのが、前の章で登場した現場監督さんです。
もし工事中に現場へ見学に行けたら、「今日はどの職人さんの日ですか」と聞いてみてください。
壁の中の配線も断熱材も、完成したら二度と見えません。
写真を撮っておくと、一生モノの記録になりますよ。
ゴールテープと、最後の走者
アンカーは、職人さんではありません
家が完成に近づくと、3本のレーンがゴール前で合流します。
最終区間のバトンパスを、順番に見ていきましょう。
おつかれさまでした。
更地に引かれた1本の線から始まったリレーが、いま、あなたの手の中の鍵になりました。
・・・と、きれいに締めたいところなのですが。
実はこのリレー、まだ終わっていません。
鍵を受け取ったあなたに、次の章で、この記事いちばんの"裏切り"をお話しします。
"自分の家"になる日と、手放す日
鍵をもらった日が、本当のゴールではなかった話
最後に、この記事でいちばん大きな"常識の裏切り"をお話しします。
ゴールテープを切って、鍵を受け取ったあの日。
「やっと、自分の家だ」と思いますよね。
でも実は・・・登記簿には、あなたの名前のそばに、もう1人の名前が載っています。
銀行です。
第6章で出てきた「抵当権」を思い出してください。
ローンを返せなくなったとき、銀行がその家と土地からお金を回収できる権利。
これが、完済の日まで、登記簿にずっと記録され続けます。
誤解のないように言うと、法律の上での持ち主は、まぎれもなくあなたです。
賃貸とはちがって、壁に棚をつけても、庭に木を植えても、誰にも怒られません。
でも、「払えなくなったら、この家は手放すことになる」という条件つき。
言ってみれば、完済までのマイホームは、"銀行と二人三脚の家"なんです。
35年ローンなら、35年間の二人三脚。
ショックを受けた方、ごめんなさい。
でも、これを知っているかどうかで、この先の35年の走り方が変わります。
知っておいてほしいことは、3つだけです。
その1 完済の日には、"最終バトン"が残っている
ローンを払い終わった日。おめでとうございます・・・と言いたいところですが、リレーには延長戦があります。
抵当権は、完済しても"自動では消えません"。
その2 途中で手放すことになったら
転勤。家族のかたちの変化。収入の変化。体調のこと。
人生には、誰のせいでもない"手放し方"があります。
手放すことは、負けではありません。走るコースを変えるだけです。
もしそのときが来たら、順番はこうです。
- まず銀行で、残債(ローンの残り)がいくらかを確認する
- 複数の不動産会社に査定を頼む(1社だけでは相場が見えません)
- 売れる値段が残債より高ければ・・・売却代金でローンを完済し、引き渡しと同じ日に抵当権を外します。銀行・司法書士さん・買主さんが同じ日に集合する、ミニリレー(同時決済)です
- 売れる値段が残債より低ければ(オーバーローン)・・・差額を貯金で埋めるか、残りを新居のローンにまとめる「住み替えローン」という方法もあると言われます
そして、この章でいちばん大事なことを言います。
返済が苦しくなったら、滞納する前に、まず銀行に相談してください。
返済条件の見直しや、任意売却(銀行の合意のもとで、ふつうの売買に近いかたちで売る方法)など、相談が早いほど選べる道が多いと言われます。
放っておくと、競売という、いちばん条件の悪い結末に近づいてしまいます。
この章から1つだけ覚えて帰るなら、これで十分です。
"困ったら、滞納の前に、相談"。
その3 完済したあとに、売る日が来たら
子どもの独立。住み替え。実家じまい。
完済のずっとあとに、家を売る日が来ることもあります。
そのとき活躍するのが・・・第2章で"一生モノの記念品"と呼んだ、あの書類たちです。
- 確認済証・検査済証・図面・・・「ルールどおり建てられた家」の証明として、査定や買主さんの安心につながると言われます
- 登記識別情報(いわゆる権利証)・・・売却の手続きに必要です
- 抵当権の抹消・・・もしまだなら、売る前に済ませておきます
流れは、手放すときとほぼ同じ。
複数社に査定を頼み、仲介(買い手を探してもらう)か、買取(不動産会社が直接買う。早いぶん安めと言われます)かを選びます。
売って利益が出たときの税金(譲渡所得)には、マイホーム向けの大きな控除の制度があると言われます。
売った翌年の確定申告とセットで、国税庁の最新情報や税務署・税理士さんに確認してください。
家は、住むための場所であると同時に、いつか誰かにバトンを渡せる資産でもあります。
"手放す日"まで含めて知っておくと、家はもっと心強い相棒になりますよ。
保存版・・・リレーの早見表と、今日の1つだけ
見学の前に、この表だけ見返せばOK
| 区間 | 主な走者 | あなたの出番 |
|---|---|---|
| 1. 土地 | 不動産会社(宅建士)・銀行・司法書士 | 契約のサイン・手付金 |
| 2. 設計 | 営業・建築士・インテリアコーディネーター | 打合せの主役 |
| 3. 契約・確認 | 確認検査機関・銀行(金消契約・つなぎ融資) | 契約のサイン |
| 4. 基礎まで | 地盤調査・地盤改良・とび・基礎屋・配筋検査 | 地鎮祭・ご近所あいさつ |
| 5. 骨組み | 大工・クレーン・屋根・板金・サッシ | 上棟の立ち会い(感動の日) |
| 6. 内装・外構 | 電気・設備・断熱・外壁・クロス・建具・外構ほか | ときどき見学・写真記録 |
| 7. 完成 | 完了検査・調査士・司法書士・銀行・保険・引っ越し | 施主検査・引き渡し・各種手続き |
| 延長戦 | 銀行・司法書士(抵当権抹消)・不動産会社(売るとき) | 最終バトン=抹消登記・売る決断 |
| 全区間 | 現場監督(伴走者) | あなたも伴走者 |
今日のポイント
- 家づくりは、お金・書類・現場の"3レーン同時進行"のバトンリレー
- バトンを持たない伴走者(現場監督さん)と、最初から最後まで走る人(あなた)がいる
- あなたの出番は少なめ。でも、契約・施主検査・書類の保管という要所では主役
- 鍵の日はまだ途中。完済+抵当権抹消登記の日が、"自分の家"になる本当の記念日
- もし返済に困ったら・・・滞納の前に、まず銀行に相談(早いほど道が多い)
施主にできる、3つの応援
- 着工前のご近所あいさつに、ひと声そえる(その後のご近所づきあいが変わります)
- 見学のとき、飲み物を差し入れる(1本でも、現場の空気はあたたかくなると言われます)
- 壁の中が見えるうちに、写真を撮っておく(配線も断熱材も、完成したら二度と見えません)
この記事では毎回、最後に「1つだけ」お願いをしています。全部やらなくて大丈夫です。1つだけ。
🌱 今日の1つだけ
散歩のついでに、近所の建築現場をひとつ見つけて、「今日はどの職人さんの日かな」と眺めてみませんか。足場が組まれたばかりなら基礎のころ。屋根が載っていたら、中では電気屋さんが走り回っているかもしれません。
リレーの順番を知ってから見る現場は、ただの工事現場ではなく、"進行中の物語"に見えてきます。
つまらなかったら、そっと通り過ぎてくださいね。それも大歓迎です。
家を買う前に読む話
諸費用・固定資産税・金利から、全12ステップ、庭や体の話まで。今日の記事の"お金レーン"を、まるごと深掘りした長編です。
読んでみる出典・最新情報の確認先
制度や職種の役割は変わることがあります。くわしくは一次情報をご確認ください。
- 建築確認・中間検査・完了検査の制度:国土交通省、お住まいの自治体・指定確認検査機関
- 登記(表題登記・所有権・抵当権):法務局、土地家屋調査士会・司法書士会の案内
- 宅地建物取引士・重要事項説明:国土交通省・不動産適正取引推進機構の案内
- 各職種の仕事内容:各業界団体の公表資料
※職種の分け方や登場の順番は、会社・工法(木造・鉄骨など)・地域によって変わります。本記事は一般的な木造戸建てを想定した目安です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の会社・商品・サービスをおすすめするものではありません。個別のご判断は、契約先やお近くの専門家にご確認のうえで行ってください。